Star Wine Listが選ぶアジア・オセアニアのベストワインバー ワイン愛好家が訪れるべき究極の目的地

アジア・オセアニアのワインシーンの台頭

近年、世界のワインシーンにおいて、アジア・オセアニア地域の存在感は飛躍的に高まっています。かつてはヨーロッパが中心だったワインの世界で、この地域は独自の文化と革新的なアプローチで注目を集めています。経済成長による所得向上と、それに伴うライフスタイルの多様化が、ワイン消費の拡大と質の向上を後押ししているのです。特に、若手ソムリエの育成や、地域の食材とワインのペアリングに対する探求心が高まり、国際的な舞台でもその実力が認められるようになりました。Star Wine List of the Yearのような国際的なアワードは、その卓越したワインリストとソムリエチームを称えることで、この地域のワインホスピタリティの質を世界に示しています。

アジア・オセアニアのワインバーやレストランは、伝統的なワイン産地のワインを深く掘り下げるだけでなく、地域の食材や文化に合わせたユニークなペアリング、そして持続可能性への意識的な取り組みを通じて、新たなワイン体験を創造しています。例えば、アジアの多様なスパイスやハーブを使った料理と、繊細なアロマを持つワインとの組み合わせは、これまでになかった味覚の発見をもたらしています。また、オーストラリアやニュージーランドといった伝統的な新世界ワイン生産国に加え、日本や中国、タイなどでも高品質なワインが生産されるようになり、地元のテロワールを表現するワインが注目されています。このような地域固有の要素とグローバルな視点が融合することで、アジア・オセアニアは世界のワインシーンにおいて、もはや見過ごすことのできない重要な拠点となっているのです。本記事では、Star Wine List of the Yearで高く評価されたアジア・オセアニアの施設を厳選し、その魅力と哲学をご紹介します。

Star Wine List of the Yearにおけるアジア・オセアニアの躍進

Star Wine List of the Yearは、2018年の創設以来、世界各地で優れたワインリストを表彰してきました。このアワードは、単に優れたワインリストを表彰するだけでなく、その背後にあるソムリエの情熱、キュレーションの哲学、そしてゲストへのホスピタリティ全体を評価するものです。アジア・オセアニア地域からも多くの施設がノミネートされ、その中から数々のゴールドスターやシルバースターを獲得しています。これは、この地域のワイン業界が世界レベルの品質と革新性を備えていることの証です。

これらの受賞は、アジア・オセアニアのワイン文化が国際的な注目を浴びるきっかけとなり、地域のソムリエやワイン生産者にとって大きな励みとなっています。受賞施設は、その地域のワインシーンを牽引する存在となり、他のレストランやバーにも良い影響を与えています。例えば、持続可能性を重視する「サステナブルワインリスト」や、新しくオープンした施設を評価する「ベストニューカマーリスト」といったカテゴリーでの受賞は、この地域が単に伝統を継承するだけでなく、未来志向の取り組みにも積極的であることを示しています。これにより、アジア・オセアニアは、世界のワイントレンドを形成する上で重要な役割を果たすようになってきているのです。

Star Wine List of the Year 受賞施設一覧（アジア・オセアニア地域 2018-2025年）

以下の表は、Star Wine List of the Yearアワードで過去にノミネートまたは受賞したアジア・オセアニア地域のワインバーおよびレストランのリストです。現在、確認できるユニークな施設は26件です。このリストからは、日本、タイ、香港、マカオ、シンガポール、オーストラリアといった多様な国と地域から施設が選出されており、アジア・オセアニア全体のワインホスピタリティの質の高さが伺えます。特に、日本からは東京と大阪を中心に多くの施設が選ばれており、そのワイン文化の成熟度が際立っています。また、バンコクのHaomaのように、複数のカテゴリーでゴールドスターを獲得している施設もあり、その卓越したワインプログラムが国際的に高く評価されていることがわかります。

注目すべきアジア・オセアニアの受賞施設

この地域で特に高い評価を受けた施設の中から、そのワインリストの哲学や特徴が際立つ場所を詳しくご紹介します。これらの施設は、単に優れたワインを提供しているだけでなく、それぞれの文化や環境に根ざした独自のワイン体験を創造しています。

Inddee (バンコク, タイ)

Inddeeは、2025年の国際決勝で「ベストミディアムサイズリスト」のゴールドスターを獲得し、アジア全体でも「ベストバイザグラスリスト」と「グランプリ」でゴールドスターを受賞しています。このミシュラン一つ星レストランは、美しい古民家を改装した空間で、現代的なインド料理を提供しています。ソムリエのジェイ・ボットーロフ氏は、クラシックとプログレッシブ、熟成ワインと若いワイン、手頃な価格帯と贅沢なワインのバランスが取れた、折衷的で素晴らしいワインリストを作り上げています。彼のキュレーションは、インド料理の複雑なスパイスやアロマとワインの個性を巧みに調和させ、ゲストに新たな味覚の発見を提供しています。審査員は、その「非常にエキサイティングなリスト」であり、「ユニークで楽しいプレゼンテーション」が特徴であると評しています。特に、「各ワインには語るべき物語があり、慎重に選ばれた選択肢は環境とワインの背後にある人々を尊重している」点が強調されており、単なる飲み物以上の、深い文化的な体験をゲストに提供しているのです。

Haoma (バンコク, タイ)

Haomaは、2024年の国際決勝で「グランプリ」と「ベストショートリスト」のゴールドスターをダブル受賞した、バンコクの都市型ファームオアシスです。このレストランは、持続可能性の限界を押し広げ、「与えるために育てる（Grow to Give）」という哲学に焦点を当てています。彼らは、レストランの敷地内で栽培した新鮮な食材を料理に使用し、廃棄物を最小限に抑えることで、環境への負荷を低減しています。ワインリストは、厳選されたワインのセレクションが特徴で、主にヨーロッパのクラシックな地域からのものと、小規模なアメリカの生産者のものが混在しています。特に、持続可能性に深くコミットした生産者からの軽やかでフレッシュなワインに重点を置いています。審査員は、Haomaのリストを「非常にエキサイティングで、ユニークで楽しいプレゼンテーション」と評価し、各ワインが語る物語と、環境および生産者への敬意を強調しています。Haomaは、単に美味しい料理とワインを提供するだけでなく、食と環境の未来に対する強いメッセージを発信しているのです。

Chi-Fu (大阪, 日本)

Chi-Fuは、2025年の国際決勝で「ベストミディアムサイズリスト」のシルバースターを獲得し、2024年には「ベストオーストリアワインリスト」でゴールドスターを受賞しています。大阪の中心部、西天満の静かなエリアにあるミシュラン一つ星の中国・アジア料理レストランです。そのワインリストは、自然派や伝統的な枠にとらわれず、高品質なワインのみを厳選している点が特徴です。この哲学により、多様なスタイルや地域のワインがバランス良く揃えられています。審査員は、そのリストが「オーストリアワインのあらゆる色とスタイル」を示し、「クラシックな生産者から革新的な生産者まで」幅広く網羅している点を高く評価しています。オーストリアワインの深遠な世界を、中国・アジア料理というユニークな文脈で提供している点が、その独自性を際立たせています。また、日本の新進気鋭の高品質な生産者のワインも積極的に取り揃えていると評されており、地元のワインシーンの発展にも貢献しています。

ル・ビストロ東京 (ル・ビストロ北参道) (東京, 日本)

ル・ビストロ北参道は、スター・ワイン・リスト・オブ・ザ・イヤー・ジャパン2025アワードにおいて、「ル・ビストロ東京」の名称でエントリーし、「ベスト・ショート・リスト」部門で権威あるシルバー・スターを受賞しました。この栄誉は、世界的に評価の高いスター・ワイン・リスト・コンペティションの日本初開催時に授与されたものであり、同店のワインプログラムがいかに卓越しているかを明確に示しています。カジュアルなフレンチビストロという設定の中で、ブルゴーニュワインに特化したユニークかつ排他的なアプローチが、国際的な審査員団に高く評価されました。そのワインリストは、ブルゴーニュ地方のワインに意図的に、そして排他的に焦点を当てており、単一の複雑で非常に尊敬されるワイン産地に対する深いコミットメントと理解を示しています。この専門性が、限られたリストの中で最高の品質と多様性を提供することを可能にしています。

その他の注目施設

• 8 1/2 Otto e Mezzo Bombana Macau (マカオ, マカオ): 2025年「ベストロングリスト」でシルバースターを受賞しています。イタリア料理の巨匠ウンベルト・ボンバーナ氏が手掛けるこのレストランは、マカオのラグジュアリーダイニングシーンを牽引し、その広範なワインリストは、世界のトップキュヴェから希少なヴィンテージまで、イタリアワインを中心に幅広く揃えています。

• Sézanne (東京, 日本): 2025年「ベストロングリスト」でシルバースターを受賞しています。フォーシーズンズホテル丸の内東京内にあるこのフレンチレストランは、洗練された料理と共に、世界中から厳選されたワインを取り揃え、特にフランスのクラシックな産地のワインに強みを持っています。

• Enoteca Boccaccio (メルボルン, オーストラリア): 2025年「ベストミディアムサイズリスト」でシルバースター、2024年「ベストニューカマーリスト」でシルバースターを受賞しています。メルボルンのワインシーンで注目を集めるこの施設は、イタリアワインに深く特化しており、新旧のヴィンテージをバランス良く揃え、ワイン愛好家に本場イタリアの魅力を伝えています。

• Le Chat Noir (大阪, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でゴールドスターを受賞しています。大阪にあるこのワインバーは、限られたリストながらも、厳選された個性豊かなワインを提供し、特に自然派ワインや小規模生産者のワインに焦点を当てています。

• Bar Cyclone (香港, 香港): 2025年「ベストバイザグラスリスト」でシルバースターを受賞しています。香港の活気あるダイニングシーンにおいて、多様なグラスワインのセレクションで知られ、カジュアルながらも質の高いワイン体験を提供しています。

• Gyoza Bar Chaozu (東京, 日本): 2025年「ベストスパークリングワインリスト」でシルバースターを受賞しています。餃子とスパークリングワインというユニークな組み合わせを提案し、シャンパーニュから日本のスパークリングワインまで、幅広い選択肢で新たな食の楽しみ方を提供しています。

• Convivial (シンガポール, シンガポール): 2025年「ベストスパークリングワインリスト」でシルバースターを受賞しています。シンガポールのモダンフレンチレストランで、そのスパークリングワインリストは、シャンパーニュのグランメゾンから新進気鋭の生産者まで、多様な泡の魅力を網羅しています。

• Robuchon au Dôme (マカオ, マカオ): 2024年「ベストロングリスト」でシルバースターを受賞し、2022年には「グランプリ」のファイナリストにも選ばれています。故ジョエル・ロブション氏の遺志を継ぐこのレストランは、その圧倒的なワインセラーと、世界中から集められた希少なワインコレクションで知られています。

• MotherVine (アデレード, オーストラリア): 2024年「ベストミディアムサイズリスト」でシルバースターを受賞しています。オーストラリアのワイン産地に位置するこのワインバーは、地元の優れたワインを中心に、国際的なワインもバランス良く取り揃え、オーストラリアワインの多様性を発信しています。

• Ensue (深セン, 中国): 2024年「ベストスパークリングワインリスト」でシルバースターを受賞しています。深センの高級ダイニングシーンを代表するこのレストランは、その革新的な料理と共に、厳選されたスパークリングワインのコレクションでゲストを魅了しています。

• Park 90 (シンガポール, シンガポール): 2024年「ベストカリフォルニアワインリスト」でシルバースターを受賞しています。シンガポールにあるこのワインバーは、カリフォルニアワインに特化しており、その深遠なコレクションは、カルトワインから新世代の生産者まで幅広く網羅しています。

• Cristal Room by Anne-Sophie Pic (香港, 香港): 2024年「ベストニューカマーリスト」でシルバースターを受賞しています。香港のランドマークであるH Zentre内に位置し、フランスの著名なシェフ、アンヌ＝ソフィー・ピック氏が手掛けるこのレストランは、そのオープン以来、質の高いワインプログラムで注目を集めています。

• IFTM Educational Restaurant (マカオ): 2022年「特別審査員賞」のファイナリストです。マカオ観光学院（IFTM）が運営するこのレストランは、未来のホスピタリティ業界を担う学生たちの育成の場でありながら、そのワインプログラムの質の高さが評価されています。

• Belon (香港): 2022年「特別審査員賞」のシルバースター受賞者です。香港のモダンフレンチレストランで、そのワインリストは、クラシックなフランスワインに焦点を当てつつも、世界の優れた生産者のワインを巧みに取り入れています。

• Louise (香港): 2022年「グランプリ」のファイナリストです。香港の歴史的な建物を利用したこのフレンチレストランは、そのエレガントな雰囲気と、料理に合わせた洗練されたワインセレクションで知られています。

• AZ (大阪, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。大阪の隠れ家的なワインバーで、小規模ながらも個性的なワインを厳選し、アットホームな雰囲気でワイン愛好家を迎えています。

• ダウンタウン (沖縄市, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。沖縄の地で、地元の食材とワインのペアリングを提案し、リゾート地ならではの開放的な雰囲気でワインを楽しめる場所です。

• FUL (京都, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。京都の風情ある街並みに溶け込むワインバーで、日本の食文化とワインの融合を追求し、独自のワイン体験を提供しています。

• カガリビ (長野, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。長野の豊かな自然に囲まれたこの施設は、地元のワインや食材を積極的に取り入れ、地域に根ざしたワインホスピタリティを実践しています。

• ラ・ヴィーニュ・ダイニング・フード (長野, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。長野のワイナリーに隣接するダイニングで、自社ワインはもちろん、世界の優れたワインと共に、地元の旬の食材を活かした料理を提供しています。

• ランギトト東京 (東京, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。東京の中心部で、ニュージーランドワインに特化したワインバーとして知られ、その多様性と品質の高さで多くのワイン愛好家を魅了しています。

• ワイン＆天ぷら荒木 (福岡, 日本): 2025年「ベストショートリスト」でシルバースターを受賞しています。福岡で、伝統的な天ぷらとワインという意外な組み合わせを提案し、それぞれの素材の味を引き立てるペアリングで新たな食の楽しみ方を提供しています。

アジア・オセアニアのワイン文化の未来

Star Wine List of the Yearアワードにおけるアジア・オセアニア地域の施設の活躍は、この地域のワイン文化が急速に成熟し、多様化していることを示しています。単にワインを輸入して提供するだけでなく、独自のキュレーション哲学を持ち、地域の料理や文化と融合させることで、世界に類を見ないワイン体験を創造しています。これは、地域固有のテロワールや食材の可能性を最大限に引き出し、それをワインという形で表現しようとするソムリエやシェフたちの情熱の証でもあります。

特に、持続可能性への意識や、新進気鋭の生産者を発掘する姿勢は、世界のワイン業界のトレンドを牽引する存在となっています。多くの施設が、オーガニック、バイオダイナミック、低介入ワインなど、環境に配慮したワインを積極的に取り入れています。これは、単なる流行ではなく、ワインが育まれる自然への敬意と、より健康的で質の高いワインを提供しようとする強い意志の表れです。また、若手ソムリエの活躍も目覚ましく、彼らは伝統的な知識に加え、最新のトレンドや独自の視点を取り入れ、ワインリストに新たな息吹を吹き込んでいます。これらの施設は、ワイン愛好家にとって新たな発見と感動の場を提供し、アジア・オセアニアのワインシーンの未来を形作っていくことでしょう。

ワイン愛好家のための次なる目的地を見つける

今回ご紹介したアジア・オセアニア地域のベストワインバーやレストランは、ワイン愛好家にとって、次なる素晴らしいワイン体験を見つけるための貴重な情報源となるはずです。それぞれの施設が持つ独自の魅力と哲学に触れることで、ワインの世界がさらに広がるでしょう。

アジア・オセアニアのワインシーンは、その多様性と革新性において、世界のワイン愛好家にとって魅力的な目的地となっています。ミシュラン星付きの高級レストランから、カジュアルなワインバー、そして地元の食材を活かしたユニークなコンセプトの場所まで、あらゆる好みに合わせた選択肢が揃っています。ぜひ、これらの施設を訪れ、それぞれの場所が織りなすユニークなワインの世界を体験してみてください。きっと、忘れられないワインとの出会いが待っています。